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  • 執筆者の写真小森 正孝 Komori Masataka

母の声

 先日不思議な体験をした。

冬から見守ってきた森の女の子が、初めて子供を生んだ。

小さい子が一匹だけだったので、気になり暫く通って様子を見ていると、ある雨上がりの朝、何かを咥え目の前まで運んで見せるように置いた。よく見るとまだ体が柔らかく、毛もない子猫の亡骸だった。

その後ろには、姉妹猫や甥猫がその子を見に来て沈黙が続いたが、母猫が鳴くとその子を置いてみんな離れていった。

暫くその赤ん坊と二人っきりだったが、日差しが強くなり始めたので木の下へ移し、人見につかないよう落ち葉を掛けると、母猫と姉妹猫が現れ、落ち葉の辺りで匂いを嗅いで、母猫が一言「ニャー」と鳴いて姿を消した。

残った姉妹猫は、落ち葉の辺りで考えた事をしているように見えた。

時々見せてくれる、猫の世界の話。



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